【ピアノに輝きと透明感を】仙台市の調律歴18年・安心安全の女性調律師のお店。家庭のピアノをはじめ、コンサートや発表会、学校など実績多数。宮城県内・県外も対応します。

調律学校とは?知られざるピアノ調律師養成学校・ピアノテクニカルアカデミーの生活


「調律師さんってどうやってなるんですか?」という質問・・・おそらく今まで1500回くらい受けています(数えてないですが)。ピアノを弾く弾かない関係なく、誰もが気になる調律師学校の生活のこと、書いてみたいと思います。
ちなみに私はヤマハの調律学校である”ピアノテクニカルアカデミー”(以下アカデミー)卒なので、そこでの生活の話が中心になります。ヤマハのこの学校は全国一校だけで、私が在籍していた当時は浜松に、現在は掛川にあります。

調律学校・始まるピアノ漬けの日々

無事に入学試験をパスし調律学校に入学すると(入学試験のことは後日また記事にしたいと思います)、次の平日から授業が始まります。アカデミーでのタイムスケジュールはというと

  • 6時半頃朝食、7時過ぎに専用バスに乗車
  • 8時頃到着、授業開始
  • お昼休憩ありの17時半まで授業、バスで下校

今思うとなかなかのハードスケジュールでした。気になる授業内容はというと、

  • 調律実習(88鍵全ての音律を合わせること)
  • 整調実習(アクションや内部の調整)
  • 修理実習(断線修理、ハンマーシャンク交換など)
  • 音楽の歴史
  • ピアノの歴史
  • ピアノの内部構造についての知識
  • ピアノ工場見学 などなど・・・

これらを一年かけて学び身につけていきます。加えて、ピアノの部品の数はグランドピアノで10,000個ほどで、どんな小さいネジや木部にも一つ一つ名前が付いており調律師は全ての名称を覚える必要があることから、部品名称を覚えるための小テストは毎日実施されていました。また、調律・整調・修理の実技と記述テストが月一回、全員の点数と順位が廊下に貼り出されるということもあり、みんなとても勉強していました。

アカデミーの入試形態には楽器店推薦枠と一般入試枠があり、違いは卒業後の進路です。楽器店推薦で入学すると卒業後は推薦された楽器店に就職という道が決まっておりますが、一般枠組は卒業までに就職先を決めなければならないため気は抜けません。人数の比率は当時、推薦:一般=5:1くらいでした。なので一般枠で入学した私は就職をするために特に必死でした。といっても、アカデミーの就職率は100パーセントで、サポートが手厚いので問題はないのですが、好きなことで一番を取りたい私はとても頑張っていました。

当時使っていた実習ノート↓


朝8時半、講師陣の合図とともに一斉に閉められる扉

調律実習とはどんなものか・・・をご紹介します。アカデミーでは一人一部屋ずつアップライトピアノ付きの個人練習室が割り当てられ、この部屋は小さな防音室となっており、閉めると外の音はほとんど聞こえません。ピアノは新品のアップライト・YAMAHAのYU 11で、数年に一回という短いスパンで新しいピアノに入れ替えがされています。

寮での早めの朝食を終えて半分眠りながらバスに揺られ、個人練習室の前に待機している8時半、「100分、2ヘルツ上げ調律始め!」などという講師陣の合図とともにタイマーのスタートボタンが押され、みんな一斉に個人練習室に吸い込まれてピアノに向かいます。ここからはもう自分との戦いで、僅かに聞こえてくるのは隣の調律の音だけで、調律が終わるまで外には出られないです。

終わったら、特殊な機械で一音一音測定し、88鍵盤のグラフを作成し講師による点数付けが行われます。
調律の作業はいくつか段階があります。はじめは一音(弦三本)を同じ音の高さに合わせること・ユニゾンから練習します。慣れてきたら割り振りと呼ばれる1オクターブ内の12音階を作る作業、そしてオクターブを合わせる練習で範囲を高音や低音に広げていき、やっと全鍵(弦の総数約230本)調律できるようになる頃には数ヶ月経っています。

アカデミーはステップ制を取り入れており、日々の調律の結果で次のステップ(段階)に進めるかどうかが決まります。それは個人の力量のによりますので、飲み込みが早い人はどんどん先に進み、遅い人はできないところを延々と彷徨い練習を重ねます。まさに挑戦と忍耐の連続です。

調律学校では、音の唸りを聴くという特殊な聞き方を練習しますが、私はこの唸りがなかなか聞こえず、挫折しそうになりました。というのも、私は小さいころからのピアノレッスンで(奇しくもヤマハの幼児科)絶対音感が付いていたおかげで音がドレミのような音名にしか聞こえず、音の唸りを認識できなかったのです。「友達は聞こえているのにどうして私は聞こえないの?私は調律師になれないんだ・・・。」と絶望的な気持ちになった覚えがあります。ですが、絶対音感をお持ちで唸りの聞こえない皆さま、ご安心ください、一週間ほどの練習で聞こえるようになりました!
この”唸りが聞こえなかった”経験は、今現在の調律にとても役立っています。

調律学校の謎ルール

今はどうか分かりませんが、当時こんなルールがありました。

  • バイト禁止
  • 恋愛禁止

アカデミーは全寮制で門限も決まっており毎日テスト・テストでアルバイトする暇はあまりありません。恋愛も・・・然り。一年という短い期間で技術を習得するためには勉強に集中しろということでしょう。こんなアイドルみたいなルールが課せられるのは後にも先にもアカデミー在籍中だけで、貴重な経験でした(笑)。

アカデミーでの楽しみ

私が在籍していた20年ほど前、スマホも普及していなかったあの頃、楽しみは食堂でのご飯と級友とのおしゃべりでした。毎日欠かさず提供される食堂のごはんを、友人や講師の先生方と一緒に囲むのは実にホッとする瞬間でした。昼休みには友達の個人練習室でピアノを連弾したり、昼寝したり、ストレッチしたり、思い思いに過ごした何気ない時間は今でも良い思い出です。それに、調律学校の割と過酷な生活のおかげで、就職してからも挫けずに頑張れた気がします。仲間と過ごした密度の濃い一年間は私にとってかけがえの無いものでした。

今回は、調律学校編を記事にしましたが皆さんどうでしたでしょうか?調律師になりたい方もそうでない方も楽しんでいただけたら幸いです。

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